長江クルーズの旅/長江の航行援助施設・警備救難施設・関連施設

 先日,“中国・長江クルーズの旅”に参加しました。長江を重慶から湖北省・宜昌(ぎしょう)まで下る旅です。航程中,行き交う船舶は見ていて見飽きません。他船の機関音や風・波の音は現場ならではの迫力です。美しい風景以外に,このクルーズの楽しみの一つでした。

 ここでは,行き交う船舶とその関連施設に焦点をあて,長江クルーズを風景・景色とは異なる切り口で紹介します。

 記事の全体は,次の項目からなっています。

■長江を航行する船舶(前回)
■航行援助施設(今回)
■警備・救難施設(今回)
■関連施設(今回)
■三峡ダム5段式シップロック通過体験記(次回)

(注)画像はクリックすると拡大します。
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■航行援助施設 

 以下の説明で左舷方向,右舷方向という場合の意味。

 本船は重慶から川下(かわしも)の武漢・南京方向にクルーズしていく関係から,左舷方向という場合は川下に向かって左側,右舷方向という場合は川下に向かって右側を意味します。なお,船舶交通は海・川を問わず右側通行です。

[灯浮標]
写真32

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 川流の抵抗を減らすため小型ボートの型をした灯浮標です。白三角の形象物とその上に灯火(左舷方向の場合は緑灯。右舷方向では赤灯。夜間点滅)が付いています。航路を示す標識として数百m間隔で設置してあります。

写真33
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 川岸に連結して係留してある予備の灯浮標。流されたり衝突で破壊されるのに備えてのことでしょう。

[灯標]
写真34

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 地形的に灯浮標の設置が困難な場所等に置かれています。

 左の人物は大きなタモで魚をすくっています。めくらめっぽうに掬えば魚が入るようです。右の人物は魚つりをしているようです。紐ようのものをタスキにかけていますが,先端を岩に結んで転落防止に備えているのかも。二人のほかに魚捕りの状況を見ている人がいますが,わかりますか。

 日本の川でも大水が出ると岸に魚が寄ってくる習性があります。長江の魚も同じのようです。

写真35
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 ギリシャの神殿柱列のようなコンクリート柱列。最初見たときは誰もこの機能がわかりませんでした。ここは三峡ダムの5段シップロックの下り入口です。実はこの柱列はシップロックに船を誘導するための灯標です。夜間白色灯が柱の上部に点灯します。点灯状況を写真で次回に掲載します。

 今はダムの渇水期でダム水位が下がった結果,柱の上方が露出しています。海の干潮時と同じです。

[灯台]
 航路標識として灯台は代表的な施設です。

写真36
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 左舷方向の峡谷に立つ灯台。“升子岩”と下部に記されています。力士の名のようです。灯台は航路の要所に立っています。

写真37
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 くとう峡入口の右舷方向に立つ灯台。

[信号所]
写真38

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 峡谷内左舷方向にある信号所。レーダー・太陽電池パネルが見えます。

写真39
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 くとう峡入口左舷方向にある信号所。


■警備・救難施設

[拠点施設]
写真40

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 長江は海上と同じく海事局の管轄。ここは,日本の海上保安部に相当する拠点施設と思われます。重慶にあります。奥に係留中のやや大型の船は,日本の小型巡視船クラス。手前の船は小型巡視艇。

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 日本の海上保安署のような出先機関。巡視艇が係留されています。右側の船も海事局の船。航路の途中に複数個所ありました。

[巡視艇]
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 警備・救難に従事する巡視艇。船名は“海巡31153”。

■河川交通関連施設

[給油所]
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 船への給油船。看板に北岩寺給油船と表示してあります。陸のガソリンスタンドのようなところ。船と表示してあるものの自航能力のないバージかも。

[埠頭]
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 コンテナ埠頭です。コンテナ船からコンテナの揚陸中です。川にせり出した埠頭は,増水時に川流の障害にならないよう空洞になっています。いまは渇水期のため船が埠頭のかなり下にあります。

写真46
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 石油受け入れ施設(船)のようです。タンカーをここに着けて油を受け入れ,パイプラインで陸上の施設に送るようになっています。

[造船所]
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 かなり大規模な造船所です。レール上の船台に乗せた船は,レールと直角に長江に滑り降ろして進水させる構造です。つまり長江に平行,かつ船首を上流に向けて進水させ,川の流れによる抵抗を減じて,進水後の姿勢制御を容易にしています。長江独特の進水方式です。

 沿海の造船所のように船尾から進水させれば,長江に入ったとたん押し流されてしまうでしょう(造船所の立地と長江との関係位置にもよる)。

写真48
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 同じ造船所です。新造クルーズ船の艤装工事中のようです。

[船舶解撤所]
写真49

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 霧が深くてよく見えませんが,ここは船舶の解撤場所のようです。古くなった船は解撤(解体)してスクラップにしなければなりません。解撤も水運を円滑に進める為には重要な仕事です。日本では瀬戸内海に解撤所があります。

 大型船の解撤では世界的にバングラデシュが有名です。

写真50
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 解撤待ちの船舶群。

[乗船用ケーブルカー(ゴンドラ)]
 岸と浮桟橋の間に急な高低差がある場所では,船に乗るときケーブルカーに乗って浮桟橋に降ります。

写真51
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 これは重慶の乗船場のものです。斜面に停止中の,電車の正面のように見える二台の箱がケーブルカーです。運行するときは交互に上下に移動します。斜面にはレールが敷いてあり鋼索で曳くようになっています。箱中央の引き戸が開いて乗降します。乗降には乗船券が必要。

[看板標識]
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 看板に「菜子梁礁石高程150米 清保持安全横距航行」とあります。“菜子梁(地名)暗礁は海抜150mです。安全距離を保って航行してください。”の意。長江の水面高さは海抜で表示します。水面変動範囲は145m~175m(ただしダムによる水位影響地点)ですから,渇水期の菜子梁暗礁は座礁の恐れがあります。他の場所にもこのような注意看板がありました。

 余談ですが渇水時には“ジェナ”は重慶まで遡航できず豊都止まりになります。その際は,重慶から高速3時間をかけて移動しなければ乗船できません。

写真53
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「前方500mに大渡口フェリー」。横切り船はシビアな衝突事故のリスクが大きいです。

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 長江の船舶交通は,世界の海上交通システムのミニ版と言ってもよく,それが長江という河川内でシステム的に自己完結しているところに特徴があります。長江の輸送力の大きさがなせるところでしょう。

 中国・重慶航運網のHPによれば,2003年以降9年間で5億トンの貨物を輸送したといいます(三峡ダム・シップロック通過実績)。長江が中国・物流の大動脈として極めて重要な役割をになっていることは,今回の航程全般を通してよく理解できました。

 古くから南京・武漢・重慶やそのほかの中小都市が長江沿線に分布していることから見ても,長江は人・物の物流幹線として,昔も今もその重要性にかわりはありません。

 重慶を出港して丸二日の航海で三峡ダムにつきます。ここを通過するとクルーズの終点・宜昌も間近です。次回は,三峡ダムの5段式シップロックゲートとロック内通航状況をいろいろな角度から紹介します。

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